Diary about 2018 Taiwan solo exhibition

 

2018年11月台湾の新竹にあるiart galleryで個展をさせていただいた。
台湾には数年前にアート台北というアートフェアで来たことがあったが、新竹という場所に来たのは今回が初めてだった。
メイン都市と言われる台北と違い、一体どんな街だろうとそわそわしながら到着し、タクシーから降りて目の前に現れた洗練された建物に驚いた。

 

 

え!?会場ここですか?!

建物に入るとホテルのような、そして日本のミュージアムのような、非常に落ち着く広々とした空間が広がっていた。
壁には既に私の作品がいくつか展示されており、翌日からの日々に、異常なわくわくと、そして不思議な緊張が広がった笑 
なんというか、不安だけの緊張ではなく、堂々とした緊張だ。

会場に面した道路は良い意味で余計なものがなく、台湾の日常を感じられる時間が流れていた。
夜は向かいのお店でThe台湾というような料理を日本のギャラリーのオーナーさんと食べた。お店の中では地元の子供などが騒いだり、慣れた様子で食事をしていて、何故かこの時間がものすごく心地よかったのをよく覚えている。

翌日、全ての作品を周りながらiartさんへの説明をさせていただき、その後は雑誌の取材が行われた。
日本にいる間に大まかな質疑応答が済んでいたため、当日は、そこから更に踏み込んだ部分へのインタビューをしてくださった。
通訳さんがいてくださった事もあり、なんとなく日本にいる時より素直に言葉がすらすら出てくるのが不思議だ。楽しい。(通訳さんに頼る癖はそのうちやめなければならない。笑 感謝しかない。)

 

 

その後少し休憩があり、さてそろそろオープニングだ!とエレベーターで会場に降りた。ドアが開いて驚いた。
人!ひと!hito!
大人だけでなく子供たちも沢山。またもや異常なわくわくと同時に、最高に楽しい緊張感。

まず挨拶をさせていただいた。とにかく今回の個展を開催できるに至った全てに対しての感謝がすごかったので、感謝を伝えるので精一杯。もっと面白い話すればよかったな。笑 

その後、全てのお客様が見てくださりながらの作品解説ツアー。
これは不安症である私にとっては、さすがに緊張マックスからのスタート笑 
だって作品というのは全ての意味が最初から決まっているわけではないし、自分にすらわからない事、日本語ですら説明が難しい事が多すぎるから。それをひとつひとつある程度の時間をとって説明していく。

しかしこれが途中から面白くなってきた。
面白くなった理由は、どんな下手くそな説明であっても、台湾の方々が、私の説明をひたすら聞いてそういう作品なんだ。と思うだけでなく、同時に「絵」そのものを真剣に見てくれていたからだと思う。
なんというか、作品をみる視線が、自分の中で作品を解釈し、自分のものとしてかみ砕こうとしてくれているように感じたのだ。

表現をしている以上、自分がすべての正解を与えようとすべき場合もあると思う。でも作品が「見ている人の何か」になってくれたら嬉しいと思っていた私にとって、あの光景は本当に感動的なものだった。不安からの緊張は、最後には、何かが伝わってるといいな…という期待に変わっていた。

 

 

ツアーが終わった後は、お客様ごとに気になる作品を本当によく見てくださり、いろいろな話をする事もできた。子供たちが私の絵を模写したりする時間もあり、自分の絵と子供が長時間向き合っている時間は今思い出してもにやけてしまうくらい嬉しい光景だった。そして出来上がった絵を一人ずつ見せに来てくれる。それがまたどれも素晴らしい。

この子はこれを描きたいと思ったんだな。この子はこの絵がこう見えたのか!なんだこの発想は!時間が全然足りない。。。もっと子供たちが楽しんでいるところを見ていたかったがあっという間にクローズの時間が来てしまった。

 

 

クローズし、誰も居なくなったスペースで、いやー初日終わったなあなんて思っていると、床の隅に置かれたペンケースが目に入った。忘れ物かなとそこへ向かおうとしたら、奥のスペースで一人の男の子がまだ絵を描いていた。まだ描きたいと残ってくれているらしく、本当にこれを描いてよかったな…ここに来られて良かった…と、心臓がやられるかと思った。
その子の妹さんも来ており、ご両親によると、今まで一切絵を描きたがらなかった妹さんが、初めてその日絵を描いたと聞いた。私はこの日を一生忘れないだろうなと思った。

 

 

夜は、台湾といえば!の夜市に連れて行ってもらった。
やはりあの独特な配色と活気はたまらない。大好きだ。
新竹中心部にある夜市、ここは屋台が神社の廟というか屋根?に覆われている。廟と屋台街が一体化している。台北の夜市とは違う独特な空気を感じた。そんな中進んで行くと、なんと屋台街の中に突然寺院が現れた。
「城隍廟」というらしい。ここの空気に一気に心を持っていかれた。城隍廟はなんというか、簡単にイメージだけいうとキョンシー。笑 配色がとにかくキョンシー感がすごい。

 

 

ちなみに城隍廟に祭られているのは、城隍神。城隍神は、城市の守り神であると同時に、死者を裁く裁判官。台北や台南の城隍廟と違って、新竹は少し変わった神様たちがいるらしい。陰陽司公は、顔の半分が黒く半分は白くなっているし、舌をベロッと出した神様もいるし。とにかく、やっぱりキョンシー。ここで我慢できず陰陽司公のフィギュアを購入。私ってやっぱりキョンシー好きなんだな。

 

 

キョンシーキョンシー言ってますが、真面目な話をすると、装飾に惹かれたのと同時に、この場所が地元に非常に根付いている。住んでいる人々にとって当たり前であり、そして無くなってはならない場所。という空気が漂っていたのです。それが私が心奪われた理由だったと思います。
日本のことを悪く言うわけではありませんが、普段は一切行かないけどイベントの時だけなんとなく良い事がありそうだからお寺や神社に行くということが増えているのではと思ったりします。
日本にももちろん普段から行く方は沢山居るとは思うのですが、この街の日々続いている活気と合間って更にその価値観の差のようなものを強く感じたのかもしれません。

 

 

翌日はラジオ収録。ラジオ。初でしたね。もう何も考えず行くことに。笑
何故なら、初めてだから。笑 
質問内容も収録中に初めて知るわけで、もう謎の境地。
変な落ち着き具合の自分に恐怖を覚える。
しかし結果ものすごく和やかに終わり、ちょっと悔やまれる回答をしてしまったぜー!というのはあるものの、非常に良い経験をさせていただきました。壁にサインもさせていただき、また来られたら良いなと思いながら無事終了。

なんかもう、こういう旅ってどこで何しても、関わった方々とさようならするのが寂しくなります。そしてこれを書いている今、3年前のことで、この後何をしたのか覚えていないのだった…この日はとにかくラジオがメインだった記憶。

 

 

翌日は台北にある恐らく台湾で一番有名スポット的な寺院、「龍山寺」へ。
こちらはとても賑わっていた。しかしやはり地元の方の姿がかなり多い。すれ違う方々から、毎日来ているのでは?というくらいの思いと空気が伝わってくる。

入り口付近にはおみくじ(日本の可愛いおみくじとはなんとなく違う…)ができる場所があって、ここが衝撃的だった。自分が占いをする場所が確保できないほどの人。地面に手をついて泣いている人がいたり、物凄い形相で願い続けている人がいた。とにかく自分の全てをここに、奥にいる神様に掛けている。と…勝手に感じただけかもしれないがそう見えた。
個人的に来たのでおみくじの正式なやり方も字も読めず、なんとなく周りの真似をして自分流お祈りを勝手にさせていただいてきた。

ここで使うのがこれまた持って帰りたいくらい良い味のある木製の三日月型アイテム。

 

 

帰ってきてから調べた正式なおみくじはこうだった。
先程の赤い三日月形の木片は「茭杯」と呼ばれる。この占方式は道教の寺院の特徴で、茭杯を使って神様からの言葉を聞く、という意味を持つそうだ。
籠の中から茭杯を2つ取り、重ねて両掌で包み込むようにして握り、参拝の時と同じように神様に手を合わせる。
そして神様に向かって「名前・生年月日・現住所・願い事」を心の中で唱え、その後に茭杯を床に落とす。(この落とす音がまた良かった…)

茭杯の落ちた結果によって、おみくじを引いてもよいかどうかが決定する。
茭杯の1つが表面、もう1つが裏面を向いていれば、神様はおみくじを引くことを「許可!」
2つとも表面を向いている時は、神様からの答えは「おみくじを引くことを認めん!」
2つとも裏面が出た場合は「判断不可!」

日本は気軽におみくじを引けますが、神様の意思で、おみくじを引かせてもらえない日もあるというのは、とても面白い文化でした。

 

この日は台北を巡ったりして新竹へ戻り、夜はまた新竹の城隍廟へ。笑
本当にここが気に入りすぎたのですね私は。
同じ場所に何度も行きボーっとする私に付き合ってくださった戸村さん、本当にありがとうございました笑

 

個展も無事オープンし、戸村さんとがやがやとした夜市屋台でいろいろ話しながら食べた夕食は忘れられません。
感謝の気持ちが込み上げて泣きそうになった事も。

この個展は私にとって何故か異様に特別だった。それは台湾という場所と自分に何か目に見えない繋がりがあるからなのかもしれない。と思ったりもしました。

帰ってきてからも私の台湾熱はしばらく冷めず。熱の方向は徐々に絞られ結果「道教」へ。やはり寺院から得たものが大きかった。ここでは詳しく書きませんが、仏教と道教は密につながっています。そしてやはりキョンシーも。笑

 

そんな感じで私の個展、台湾の旅2018は幕を閉じました。

会場では宿泊までさせていただき本当に感謝しきれないほどのお世話になりました。
すぐには行ける所で無いにしても、あの場所が、そしてあの皆さんが居る場所があると思うと嬉しくなります。
また皆さんにお目にかかれますように。

そして作品が誰かの心の中で生きていますように。
ありがとうございました。